ビデオ撮影(主にマルチカメラ撮影)を行う場合、ほとんど私ら業者では「仕込み」という機材セッティングを行わないといけない。
当日仕込めればいいのですが、舞台屋さんが入る時などは前日に仕込むこともあります。この「仕込み」カメラ台数が多いほど機材も多くなります
カメラ、三脚、カメラ周辺機材、ケーブル各種、スイッチャー卓など。合計すれば200・300kはあるかと思われます。もう引越し作業と同じです。
その中でもケーブルがとにかく重い!重すぎるっ!!HDに移行してからというものマルチケーブルの太さも変わり、50mケーブル1本で約6kg超あります。
それをカメラ台数分、会場に這わすわけです。
( ;´Д`)これが大変・・
とにかくお客さん第一!動線確保は必須条件
会場はイベントホールなどを例にとります。まず前方にメインのステージがあります。
その両サイドに花道、客席は中通路を境に3ブロックほどあります。1ブロックにつき通路は左右に2つはあり、客席中央から後方までは階段上に客席が設けられ、非常口・開場扉も8つほどあります。
その中でケーブルを客の邪魔にならないように這っていきます。
基本はカメラ席からスイッチャー卓までの最短距離で這わす。席の真後ろか席の前、足元の溝にケーブルを落としこんでいきます。
卓が上手ソデならば上方向に向かって進行していき壁に当たったら壁伝いに這わしていく。
必ず非常口をまたぐことになるので養生マットは必須です。会館によっては非常口上部にケーブル用のフックがあるとこや、扉の前にケーブルを落としこめる(フタ付き)溝がある場合もあります。
しかし、そんな業者に優しい会館は少ないので、養生マットは必須ですね。この養生マットはケーブル専用の重いものを使ったほうがいいです。
養生テープを必要としないので節約になりますし、踏まれても安心感があります。
養生は全てのケーブルを這わせてから行う
ウチを例にとると、マルチ4本、3c2本、長時間撮影の場合は電源ケーブル4本。
最初にルーズめに引いておき、全て揃ったらスタッフ2人でケーブルを引っ張って直線にしていきます。一人は支点を持ち、一人はケーブルを束ねながら引っ張る。
なるべく養生テープを使わず、壁伝いにキレイにしてあげる。ケーブル養生がヘタだと、演目自体にも影響しかねません。もちろん会館さんにも嫌われちゃいますw
会館の電源や備品はタダではない!
コレ、業者さん結構ヤっちゃいますよね? コンセントがあれば勝手に挿す。椅子やテーブルなども勝手に拝借。勝手にガムテ、勝手にハコウマ、勝手にスタッフオンリー。
いくら主催者から依頼されてはいても、会館側は主催者とだけ契約してるので業者はぶっちゃけ関係ない。
業者は業者で会館側にお願いしなければいけない。特に三点吊マイクや平台、電源口はタダではないので事前に依頼して支払いましょう。
カメラ席や花道などの無人カメラの位置確認、吊マイクやMCのパッチ出力のお願いなど。事前にFAXや電話連絡をしておくことが円滑な仕込みを行うための重要ポイントなのです。
正直、会館さんと仲良くしておくと仕事が増える場合もあります。主催者が会館さんとの打合せの際に、撮影業者を紹介してもらえないかとよく言われるそうです。
そういった場合、良い印象のビデオ業者だと主催者に紹介してくれたりする。もちろんあくまで紹介ですけど。談合は禁止ですからね。
リハ・ゲネプロ中は息を殺して仕込め
特にガムテ(養生テープ含)をビッーー!!ジャッ!てやるデリカシー無いヤツ~。
リハやゲネは本番前の超ピリピリムードでやってます。しかも音楽系なら耳が敏感になってます。そんな微妙なニュアンスが左右されてる時に「ビッーー!ジャッ!」とか
「○○さんインカムチェックお願いします!」とか「ケーブル足りネーよ!」とか私語連発。これでは来年の撮影は無いと思っていいです。
おおまかな機材配置・ケーブル這わせはリハ前までには済ましておきましょう。リハが始まってしまうと、ただでさえ客席は照明落ちますから。
現場で一番エライのは舞台監督!
いや~、大嫌いなんです・・舞台屋。特にバレエやミュージカル系はほぼ依頼されてますね。照明・音響・大(小)道具など、演出にほぼ直結する仕事ですから、もはや主催者と対等!いや、場合によっては主催者よりエライ(エラそう)かも。
とにかく、カメラ位置から、ケーブル、卓の場所、ホワイト調整、音声収録など、ほとんど会館さんとのやりとりで済んでたのが、舞台屋さんが入ると一転。全てにおいて舞台監督の許可を得て撮影しないといけなくなる。
つまり、主催者・会館・舞台屋のトリプルアタックなわけです。それに演出家も加わればメンドクサイことこの上なしっ!
対処方としては、やはり事前に調整しておくことが最重要。仕込み日時・カメラや卓位置・音響さんから音をもらう手配・ホワイト調整用にフル明かりにしてもらう時間など、できるだけ細かく伝えておくこと。
舞台屋さんは舞台を魅せてナンボなんで、ビデオ業者など三の次。やはり限りなく低姿勢でお願いすることがコツ。
コッチは撮れてナンボですけど、舞台を魅せることが主催者の本来の目的だということを忘れずに。
会館のケツを確認しておく
これも気にしていない業者さんいませんか?業者が会館に滞在できる時間は主催者が会館を借りている時間です。17時がケツだとして、16時30分に終わったとします。どうしても30分以内に会場内から退出しなければならない規則があります。
それを知らずに悠長にカタシてたりすると厳重注意されるわけです。注意だけならマシで延長料金が発生する場合もあります。会館さんも人間ですから・・そりゃ大目に見てくれることもあります。
しかし、基本的に会館さんは主に施設(市町村)から委託されてる業者さんなので、向こうは向こうで規律を守らなければいけないんです。なので会館のケツは必ず確認しておきましょう。
このように、ビデオ撮影の仕込みは色々な人との関係の上に成り立っています。懇意にでもしてなければ、会館さんや舞台屋さんはビデオ撮影している人間は全てビデオ業者として認識するでしょう。
ヘタな態度をとれば、次に来たビデオ業者さんに迷惑をかけることになります。撮影現場では最低限のマナーを守り、お互いに業者さんが良く思われるようにしたいですね。
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